【特集記事】 間違いだらけの船底塗料選び |
更新日 2018.05.10 |
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あなたは何を基準に船底塗料を決めていますか?
・ショップで薦められたから
・値段が安いから
・雑誌に広告が出ていたから
・マリーナのメカニックや業者さんに勧められた。
・塗っておけばいいだんだろうと自分で清掃している。 |
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こんな塗り方では、放っておけばあなたのボートの船底は大変なことになってしまいます。
え?半年に一度船底清掃しているから安い船底塗料で大丈夫?
エンジンオイルじゃないんだから、定期的にメンテナンスすればOKなんて物じゃないんですよっ!
船具屋として数多くの本船のドックに立ち会ってきた経験から言わせていただくと、
マリン業界には正しい船底塗料や船底塗装に関する知識の豊富な方が少なすぎるっ!
ついでに正しい船底塗料の知識を持ったオーナーさんも少なすぎるっ!!
ですので、ボートを傷めず・燃費良く・スピードの落ちない とっておきの情報をこっそりお教えしますね。 |
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各社から色々な船底塗料が出ていますが、基本的には「水に溶けるタイプ」が主流です。後述するペラクリンのようなシリコンタイプも本船では実用化されています。 ※本船とは、19t以上の大型船のことをさします。 |
この「水に溶けるタイプ」には大きく分けて、
● 防汚成分が染み出し、その後スカスカになった塗膜が
水流で削れる「自己消耗型」 (水和分解型と表記される事もあります)
● 海水の弱アルカリ成分に化学反応を起こして
高分子ポリマーが分解していく「加水分解型」
の2種類があります。
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それぞれペンキの缶に、自己消耗型や加水分解型と表記してあるので参考にして下さい。
各メーカーとも自己消耗型<加水分解型という価格設定になっていますし、どちらかというと加水分解型の方が高級塗料という位置づけです。
自己消耗型には水に溶けていく過程でスカスカになった塗膜が均一に削れていかない為に、比較的塗膜表面が凸凹になり易く、そのためボートが奔るときに凸凹が抵抗になってしまい、スピードが落ちる・燃費が悪くなる・フジツボなどが付き易くなるなどのネガティブな要素があります。
ところが加水分解型は分子レベルでの塗膜の溶解が起こるために塗膜表面が凸凹になりにくく、いつまでもツルツルの塗膜が水に接するため抵抗になりにくいのです。
事実きちんと塗膜コントロールされた場合、完全に塗膜が溶け切ってしまう事もあり得ます。
製造技術的にも自己消耗型よりも加水分解型の方が新しく、各メーカーともこの技術において、しのぎを削っているので、新商品が出るのもほとんどの場合はこの加水分解型です。
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Q:それじゃ、加水分解型のほうがいいの?
A:そのとおりです!
こうしてみると圧倒的に加水分解型が良さそうですが、弱点もあります。 まず大きな問題点としては、「淡水では全く溶けない」ということです。溶けないことには防汚成分が効果を発揮できないので藻などが付着してしまいます。(もっとも淡水ではフジツボなどは付着しないのですが)
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次にボートが動いていない場合、防汚成分の溶出量が自己消耗型>加水分解型となる点です。
頻繁にボートを動かさない場合は自己消耗型の方が汚れにくいのも事実です。もっとも超長期に渡ってボートを動かさない場合は加水分解型の方が汚れにくいです。
その理由は自己消耗型の場合、防汚成分が抜けてしまったスカスカの層(専門用語でスケルトン層といいます)の上にフジツボなどが付着してしまいますが、加水分解型場合はゆっくりとではありますが防汚成分が溶け出るからです。 |
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ところで防汚成分とは一体なんでしょう?
防汚成分にも大きく分けて2種類あります。 亜酸化銅と酸化亜鉛です。
現在主流は亜酸化銅を主成分とする銅アクリルタイプで、塗料の色が若干黒ずんだ色になるのが特徴です。
また喫水から少し上が黒変してしまい、ちょっとみすぼらしい色になります。これは成分の亜酸化銅が空気に触れて酸化してしまうからです。
この銅アクリルタイプはカキ・フジツボといった動物類に対して強い防汚効果を発揮します。
もう一方の酸化亜鉛を主成分戸する亜鉛アクリルタイプは、塗料の発色が良く明るい色目になります。
また、喫水から上の色の変化もほとんどなく、プレジャーボート向けといったところでしょうか。
この亜鉛アクリルタイプはスライム・アオサなどの植物類に比較的強く、フジツボなどの動物類には銅アクリルタイプより劣ります。 |
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どちらを使うかはオーナーさんの好みですが、注意しないといけないのはドライブ船やシャフト船のオーナーさんです。銅アクリルタイプをドライブやシャフト、プロペラ、トリムタブなどに塗ってしまった場合、電蝕で大変なことになります!
これは鉄やアルミの方が、銅よりも先に海水に溶けてしまうからで、下手をすると1シーズンでボロボロになってしまいます。(イオン化傾向が、鉄・アルミ>銅ということです。化学の授業で「貸そうかなまあ当てにすんな・・・・」と覚えたやつです)
船底塗料は銅アクリルタイプを塗っても大丈夫ですが、決してドライブやシャフトなどの金属部分に亜酸化銅タイプを塗ってはいけません。そういう金属部分には亜鉛アクリルタイプかプロペラ・ドライブ専用の塗料をお使い下さい。
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以前は「有機錫」タイプなる物があったのですが、これは環境汚染がひどい為(具体的には生態系のメス化など)、メーカーが自主規制しており、現在手に入ることはありません。
漁師さんや昔からのボートオーナーさんがよく「昔の塗料は性能が良かった」というのは、この「有機錫」タイプを指しています。
発色も良く、電蝕も起こさず、年に1度のメンテで済んだ本当に良い塗料だったのですが。
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また、最近ではシリコン系の船底塗料も出てきています。
代表的な物は中国塗料の「ペラクリン」シリーズや日本ペイントマリンの「エコロシルク」などです。
これらの塗料は「溶け出す」タイプではなく「水や汚れをはじく」塗料です。特徴としては一度塗ったらずっと効果を発揮し続けることですが、塗装前に下地を鏡面加工しなくてはいけなかったり、密着性を良くするためにプライマーやバインダーを塗装しなければいけないこと、価格が高いこと、塗装が剥がれたときの補修が難しいことなどがあげられます。 また、プレジャーボート向けの商品が無く、「ペラクリン」はプロペラやドライブ専用、「エコロシルク」は本船用で未だデータが出そろっていないなど、まだまだこれからの商品だと思います。 |
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最近登場したのが、低炭素化社会を目指して省燃費を実現する省燃費型の船底塗料です。
現在本船向けに日本ペイントマリン社から"LF-Sea"という商品しか発売されていませんが、この商品の特徴は、加水分解型船底塗料をベースに、塗膜表面に親水性のヒドロゲル膜を形成して、塗膜表面にある微細な凸凹を滑らかにしてやることで、約4%の燃費向上を実現しています。
この商品は平成22年度の国土交通省の海上交通における低炭素化促進事業に係る補助金の対象商品となっております。
まだまだ価格も高く、本船向けしか販売されていませんが、ゆくゆくは船底塗料の主流になると思います。
せんぐ屋ではLF-Seaの販売を開始しました! |
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「塗料は半製品」と言われるぐらい、塗り方によって性能に差が出てきます。
注意点としては
1.水洗いをしっかりと行い、乾燥も十分に。
2.フジツボの皿(付いた跡)をしっかり落とす。
3.古い塗膜は落とせるだけ落とす。
4.塗膜はなるべく厚く。シンナーで薄めない。
5.塗装の乾燥をしっかりする。
それぞれの項目についてくわしく述べてみます。 |
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水洗いをしっかりと行ってください。
これは船体に塩分が残っているとそこに水を呼んでしまって塗膜剥離の原因となります。
海水で洗うなど以ての外ですのでやめてくださいね。
また乾燥が不十分だと、塗膜と船体の間に空気の膜が出来てしまい、これも剥離の原因となります。
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フジツボの皿が残っていると、その上に塗装してもそこが凸凹になってしまいます。
速度が出なくなるばかりか、その凸凹部分を足がかりに、フジツボが付着する原因となります。可能な限り落としてください。
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古い塗膜は密着性が弱くなっていますので、その上に塗装しても、下の塗膜からの剥離は止められません。
出来る限り古い塗膜は落としてください。
もちろん、旧塗膜すべてを落とすことに越したことはありませんが、ものすごい手間と労力がかかります。 旧塗膜を剥がすのは、5~7年に一度で良いのではと考えます。
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現在の船底塗料は、ほとんどが自己研磨型(溶けたり削れたりする)塗料です。
ですから防汚性能は、塗膜が十分に厚い状態でないと発揮されません。 どのメーカの船底塗料もハケ塗りで適正な膜厚になるように設計されています。
また、厚く塗ればそれだけ長く持ちます。
事実本船(貨物船やタンカー船など)では、厚塗りしてドックからドックまでの期間を2年や2年半にする船も出ています。
プレジャーボートは稼働率が低い(あまり動かない)ため、ドックインターバルを2年にすることは難しいですが、厚塗りすると長持ちすることに変わりはありません。 |
乾燥をしっかりとしないと剥離の原因になります。 塗膜は表面的に乾燥しているように見えても、中はまだ乾燥しきっていないことがあります。
このような状態で水に浮かべてしまうと逃げ場を失ったシンナー成分が水ぶくれ状に膨れてしまい、これがやがて剥離の原因となります。
最低でも5時間以上、できれば24時間以上の乾燥時間をみてほしいものです。 |
以上のことに留意して塗装すると、塗料の性能を100%発揮できると思います。
また、ハケ目が船の進行方向と平行になるように注意して塗れば、スピード低下を最小限に抑えることができます。 ローラー刷毛による塗装は手軽でよいのですが、船速をなるべく落としたくない方は手刷毛塗りかエアレスによる塗装をオススメします。 |
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省燃費型 防汚塗料 LF-Sea |
シリル・銅アクリル加水分解型船底塗料(ハイブリット型)
親水性ヒドロゲル(Water Trapping Technology)を組み込んで、塗膜表面の海水の流れを制御することで摩擦係数を減少させ、燃費向上・船速向上の効果を高めます。
平成22年、23年度 国土交通省 海上交通低炭素化促進事業費補助金の対象商品として登録されており、省燃費の性能は国のお墨付きです。
燃費向上と船速アップに貢献します。
※使用状況によっては効果が出ないケースもあります。 |
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最高級シリル系 加水分解型 FRP船用 船底塗料 プラドールZ |
プレジャーボート向けの最高級船底塗料です。
ニュープラドールの上位モデルとなります。NKMの特許、シリルポリマー型の樹脂を使っているため周りの遊動電流の影響を受けにくく、加水分解が均一に起こります。これはかつての有機錫型と同等の加水分解性能です。海域に左右されず、長期インターバルにも対応できる高性能塗料です。
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加水分解型 船底防汚塗料 ニュープラドール |
プレジャーボート向け高級船底塗料です。
これを作っているメーカーのNKM(ニチユ関西マリン)はとても技術力の高い会社で、この塗料もかなりの好成績を残しています。
スタンダードな「亜酸化銅」タイプと色のきれいな「酸化亜鉛」タイプ(デラックス)の2種類があります。
塗料の伸びもよく、作業性も優れています。 |
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加水分解型 防汚塗料 うなぎ塗料一番 |
表面が鰻のようにヌルヌルとなり汚れが付かなくなることから名付けられた、漁船向け船底塗料です。プロの漁師が愛用するほど性能が良く、またどの海域でも安定した性能を発揮できるようにチューニングされています。色目は少々他の塗料に劣りますが、性能は折り紙つきです。 |
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普及型 加水分解型 船底塗料 満帆 |
高級加水分解型のうなぎ塗料一番の廉価版。
防汚成分は同一ですが、加水分解反応がうなぎ塗料一番よりやや劣ります。
手軽に加水分解型の性能を試したい方にはうってつけの商品です。 |
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水和分解型 船底塗料 順風 |
性能より価格を重視される方にオススメの塗料です。
年に2回以上、上架清掃される方にはこちらの塗料で十分です。
水和分解型ですので、塗重ねる度に凸凹が酷くなりますので、5年~7年で船底塗装の剥離の必要があります。
ラインナップにブラックあり。 |
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加水分解型 船底防汚塗料 ふぐ |
せんぐ屋オリジナルの加水分解型船底防汚塗料です。
コストがかかる加水分解型の限界にチャレンジした塗料です。
環境に配慮したハイバリア内容器入り。 |
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ニューペラクリンPLUS ジュニア 金属防汚塗料 |
プロペラ用防汚塗料と言えばコレ!
プロペラの高速回転でも剥離しない強付着力のプライマーと従来の防汚システム(防汚成分が溶け出す)とは全く違い、水をはじき海洋生物を付着させないという画期的な防汚システムです! |
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